にわかが道をやってくる

競馬のこととか、競馬以外のこととか。



石田衣良「スローグッドバイ」ならすぐにでもさしあげる

今週のお題「プレゼントしたい本」

 

と、言われても、実際のところいささか返答に窮してしまう。

他の方のブログにも書いてあったのだが、相手によって贈るのに相応しいと思える本はまったく異なる。人種、性別、年齢、境遇、思想、性癖などの相違を超えて万人にマッチする書物などはおそらく存在しない。

かつてコールセンターで、同年代のバイト仲間たちと昔ハマっていたある漫画が装いも新たに刊行され、購入してみたけどやっぱ面白えって話で盛り上がっていた際のこと。傍で話を聞いていた60歳近くの女性オペレーターさんが興味を示し、その漫画を貸してほしいと頼んできた。
きっと若者たちが面白がっているものに自分も触れてみたいと思ったのだろう。たぶんお気に召さないと思いますよと散々言ったのだが、どうしても読んでみたいと譲らなかった。
仕方がないので、全4巻を貸してあげたところ、1ヶ月経っても2ヶ月経っても返ってこなかった。

いい加減返してもらえないでしょうかと申し出たところ、実に忌々しそうな表情を向けられ、あんな下品で汚くてくだらない漫画は処分したと言われ、あんなものを読んでちゃいけないと説教をされた。

勝手に自分の所有物を処分されたうえに、説教まで受ける憂き目に遭ったわけだが、自分は反抗もしなければ弁償請求もしなかった。
そりゃそうだろうな、と思ったからだ。

かくして自分は「珍遊記」不完全版を新たに買い直す羽目になったのだった。

さて、そんな反省を踏まえると、ざっくり「プレゼントしたい本」などとお題を提示されても、その客体が明示されていない以上実に難しい。
更に身も蓋もないことを言ってしまうと、大前提として、自分には他人に書籍を贈呈したいという欲求が一切無い。貰う分には病気以外なら何でも貰っとけという、真田安房守の遺言に従う所存だが、何故他人に財物を譲り渡さねばならないのか。

それでもどうしても、特に誰にと目的語を定めずに「プレゼントしたい本」を一冊あげるとなると、この本になる。

何年前のことだったか。自分にとって、直木賞作家の石平氏はほぼ唯一の嫌いな作家だった。
作品を読んだことがあるわけでなく、たまにクイズ番組に出てきては教養・知識の浅さを披露し、コメンテータめいたことをやっては思想・人間性の薄っぺらさを露呈する、日本浅薄振興会の会員であらせられる氏の姿に嫌悪感を抱いており、こんな人間の小説など読みたいとも思わなかった。

しかし、作家にとってメディアへの出演など余技に過ぎない。あれだけ売れている作家さんなのだから或いは作品は面白いのかもしれない。食わず嫌いもどうかと思って、古本屋で200円ぐらいで購入したのがこの「スローグッドバイ

読み進めていて唖然とした。信じられない思いにとらわれた。

超絶につまらない。こんなつまらない本がこの世にあるのか。

今まで好みに合わない小説には数多く出会ってきたが、こんなにも何一つ価値を見出せない作品は初めてだった。
実は作品の内容はほぼまったく覚えていない。ただただつまらなかったという印象だけが強烈に残っている。
今回、ブログを書くにあたり読み返してみようかとも思ったが、本棚から引っ張り出してページを繰るのも忌々しいので、なんとなくこんな雰囲気の文章だったような気がするというものを書いてみよう。

ホテルホニャララ(オシャレそうな固有名詞)の最上階のスウィートルームでセックスを楽しんだリカコは、傍らのバーキンから取り出したシガローネをくゆらせ、窓の外に広がる夜景を眺めた。
「東京のネオンって全部が嘘っぽい」
ポツリと呟く。
「えっ?」
「私たちは嘘の世界で生きてるのかもしれないわね」
リカコは浅い溜息とともに吐き出された紫煙を見つめ、ふとシヴィアな現実を感じた。
もう若くもない。いつまでもこんな生活を続けることはできない……女には賞味期限があるのだ。

こんなんじゃねえよ、と言われる方もいるだろう。実際、多分こんなんじゃない。リカコなんて出てこないだろう。

まあ要するに、こんな風なオシャレ気取ったダサい感じというか、埼玉の奥地あたりの人が東京人きどってる感じというか、アンジャッシュ渡部からお笑いのセンスと能力を削りとった感じというか、そんな人物・文章・世界観で構成されており、つまりはそんな感じの作品だった。

なお石平氏のファンだという女性にこの作品の感想を伝えたところ、それはハズレの作品なのでIWGPあたりを読むようにと言われた。
ナポリタンを食べてみたらとんでもなく不味かった店があって、そこの名物はハヤシライスだよと言われても、誰が二度と食べに行くものだろうか。

そんな、自分が唯一読んだことのある石田衣良作品「スローグッドバイ

もらってくれる人がいると、いらないものの処分にもなり、本棚のスペースも空くので大変に助かる。


※全部個人のアレなんで、石田衣良氏がアレな方はアレしないでください。