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にわかが道をやってくる

競馬のこととか、競馬以外のこととか。



NHK杯 佐藤天彦名人vs渡辺明竜王

谷川浩司九段が、体調不良を主たる理由として将棋連盟会長を辞任した。

加藤一二三九段は順位戦C級2組で3つめの降級点がつくことが確定となり、残っている棋戦でシードを得られるまで勝ち進まない限りは今期で現役を退くこととなった。

そんな歴史的なビッグニュースにも、まるで心が食いつかず、ただ流れていく。
もう自分は将棋ファンじゃなくなってるのかな、とさえ思ってしまう。

今なお解決は見ていない将棋界の大不祥事について、報道やらまとめサイトやら第三者委員会の報告書の要約やらをチラ見してる程度の身の上では語れることは多くない。
誰が何を思い、どんな言動・行動をとったのか正確なところは未だ我々には開示されておらず、現時点では誰が悪いか、悪いとしてどの程度なのか断を下せない。

ひとつ確実なのは、事実を精査し、公明正大に裁定を下し、適切な措置をとるべき義務と責任のある将棋連盟理事たちは、その正反対を行い、日本の素晴らしい伝統文化に消えることのない泥を塗りたくったということ。
これだけは残念なことに揺るぎのない事実である。

その長たる連盟会長は責任を果たすべき最たる立場。それが体調不良だの言って辞任するなどこれまた正反対、責任を放棄する行為に他ならない。
つくづく呆れるばかりで、ますます心が離れていく自分がいる。

将棋そのものの面白さ、トッププロの対局の面白さは変わりない筈と頭ではわかっていても、どうにもシラけてしまい、将棋観戦からは随分遠ざかってしまっていた昨今、NHK杯で竜王と名人の大二冠激突が実現すると聞き及んでも、以前のように心ときめくこともなかった。
これが4ヶ月前であったら、どれだけワクワクしてこの対局を観たことだろう。

むしろ、頂点にいる者同士の対局を観ることで、再び将棋に心を向けられるようになりたい、素晴らしい趣味を失いたくはないと縋るような心持ちで、久々にプロの対局を観戦。

 

先手・佐藤天彦名人の居飛車穴熊、後手・渡辺竜王の振り飛車穴熊の対抗型。
渡辺竜王は昨今ゴキゲン中飛車をしばしば採用することは聞き及んでいたが、やはり居飛車党が飛車を振るとちょっと「おっ」となる。解説者的にはむしろ本線だった模様だが。

後手の渡辺竜王が、果敢に先手の穴熊を崩しにかかり、成功しかけたかに見えるも、名人の受けは一級品。
詰めろ馬取りを掛けさせ、その隙に破れかけた穴熊を金銀で再構築。さすがの竜王も気が滅入るのではないだろうか。
竜が先手陣に侵入してくる頃には、もう二度と自玉には近づかせませんよとばかりの態勢を築きあげ、攻勢に出るや、一切間違うことなく寄せきってしまい、終局図だけ見ると圧勝の形。充実ぶりを見せつけた。

面白かったんだとは思う。
当方将棋もにわかゆえに、盤上のあちこちで駒が躍動する派手な空中戦の方が好みではあるが、濃密な局地戦といった息詰まる攻防から後手陣の守り駒があれよあれよと引き剥がされていく模様は一種のカタルシスといえるものがあった。
解説の村山慈明NHK杯選手権者も、対局者の特徴を盤上盤外どちらからもよく知る者としてベストな人選だったし、総じて満足度の高い放送だったと言えると思う。

しかし、やはり手放しでは楽しめなかった。

調査依頼どころか、処分の強要といえるような形で連盟に働きかけたとも、自ら週刊誌に情報をリークしたとも伝えられている渡辺竜王。
今のところ、彼は巨大な何物かに守られていて、良くも悪くも真実が明らかになりそうな様子は見えない。

が、谷川会長と島理事の辞任は、彼の守り駒がひとつ剥がされたという風にも解釈できるのではないだろうか。
今回の対局で穴熊を破られたように、これから次々と守り駒が引き剥がされていくことになったりもするのではないだろうか。

そんなつまらないことを考えてしまうあたり。
まだまだ将棋の対局を純粋に楽しむ気持ちを取り戻すには、時間がかかりそうである。